前田有歩 写真展「The Air」(伊勢和紙ギャラリー)

2018年10月13日(土) 前田有歩 写真展「The Air」(伊勢和紙ギャラリー) (車、徒歩)

本日は現在開催されている前田有歩 写真展「The Air」を観覧するために伊勢和紙ギャラリーを訪れた。

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

「The Air」 前田有歩写真展 Alfo Maeta Exhibition

会期 ◎ 2018年10月12日(金) ~ 31日(水) ◎ 9:30 ~ 16:30 ◎ 10月21日(日)は休館
会場 ◎ 伊勢和紙ギャラリー

10月13日(土)13:30 より前田有歩によるギャラリートークを開催します。
作者は10月12日(金)~14日(日)・30日(火)31日(水)に会場にてお待ちしています。

( 伊勢和紙 IseWashi より引用 )

 

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

午後1時30分よりギャラリートークが開催されたが、午後1時に来客があったため、ギャラリートークに参加できたのは開始時刻を過ぎてしまった。受付を済ませ、2Fの伊勢和紙ギャラリーへ急ぐとギャラリートークはすでに開始されていた。オープニングからどれだけ過ぎてしまったのだろうか?

私が最初に耳にしたのは山形の沼の話だった。

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

早朝に沼を訪れると地域の人々も沼を訪れている。朝4〜5時に訪れる人、タバコを吸いながらぼぉッと眺めている人・・・。その雰囲気に山川草木に宿る八百万の神の存在を意識し現場の雰囲気・五感で感じるものを捉え伝えたくなった。そして、その現場を撮るとテーマ「Voice」でシリーズ化した。

ここで「Voice」と言うテーマを定めたが、自分は先にテーマを定めて撮るのが苦手。そのため無理にテーマを定めて撮ることはせず、とにかく気になるものを撮っている。撮影の1〜2ヶ月後にキーワードを拾い集めてテーマを決めるからテーマは後付となっている。

その後「Voice」のシリーズをフランスに紹介する機会があったが、草木の(神々のような)何かから声が聞こえることなど海外の方には宗教的にも受け入れ難い。「何とかこの本質を説明しなくては」との思いから複数の画像を合成したり、試行錯誤を繰り返すなかでどうも空気を撮っているのだということに気付いた。

目の前に手を差し出すと人間の目は手にピントを合わせるが、その手を外すと遠景にピントが合うようになり手があった位置にピントを合わせ続けることはできない。ところがカメラはどの位置にでも自由にピントを合わせることができ、空気(見えない何か)を被写体とすることさえできる。

水は売り買いされるなど平等ではないが、現在は空気なら地球上の全人類に平等に与えられている。日本人はその空気から何かを感じ取っている。草木や神々などではなく空気としての説明なら日本人以外の方々にも何かを感じ取ってもらえるのではないか。こんな思いから「空気を撮る写真家」となった。

しかし空気を撮ってもそれを表現することは容易ではなく、その表現のために最適だった紙が和紙だった。実は紙に印刷することはプリンタの表現力や再現性などの問題で自分にはできないと思っていた。しかしその思いは2013年に覆された。その年、ある方が自分自身で和紙にプリントした作品を見る機会を得た。その表現に感銘を受けた翌年(2014年)、カメラおよび関連機器のコンシューマー向け展示会である「CP+」において、大豐和紙工業株式会社のブースで中北社長によるセミナーを聴き、和紙のサンプルを各種一枚ずつもらった。

それらのサンプルを大切に使いながら和紙へのプリントを楽しんだ。リーズナブルな和紙へのプリントを繰り返していたがどうももの足りなさを感じ納得できない状態が続いた。その後、知人に同じく大豐和紙工業株式会社の製品である「風雅」(それなりの価格のプリント用和紙)を薦められた。「風雅」を使ってみると暗さをうまく表現でき(暗いなかの少しの光)、雪のシーンにも最適、プリントされた領域外との連続性が見えるなど楮と雁皮の繊維が自分の作品にマッチしていた。和紙へのプリントで本当に納得できたのは2018年5月頃のこと、つい最近だった。

 

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

また、写真絵本も作っているが「空気売りの少女」ではその背景としてここに展示している写真を使っている。カメラで撮影した画像データを直接使用するのではなく、空気を撮った作品を使用するために和紙にプリントした作品を改めて撮り直したものを使っている。そうしないと空気を撮った作品を背景にしたことにはならない。つまり和紙にプリントすることによって空気を撮った作品として仕上がることになるから。

写真絵本については、2017年にさとうなつきさんと出会い6月に会社を立ち上げた。印刷だけは外部にお願いしつつも、自分たちの手作業で製本しながら出版するスタイルで2冊(「わがままナおうさま」と「空気売りの少女」)を世に送り出している。さらに、次の企画も・・

「わがままナおうさま」は子ども向き、何でも所有権を主張すれば誰も仲良くなれない。独占することができない空気を独占しようとする王様を見て考えてもらえる内容になっている。
「空気売りの少女」は大人向き、サブギャラリーではその作り方も含めて紹介している。絵かきである相棒と文章を作り上げ、これに合うように絵を描いてもらい、メインギャラリーの正面に展示してある8枚の作品を(改めて撮影し)背景に使った。このストーリーは近未来の話であり話のなかの過去(今の現在)には山形で撮った空気(写真)が、話のなかの現在(今から考える未来(像))には東京で撮った空気が採用された。

ストーリー、絵、写真のいずれが作品作りの始まりなのか? 写真はストーリー作りの先に撮ってあったがこのストーリーを作ることなど意識せず(こうなるとは考えず)に撮っていた。しかし、無意識の意識が撮っていたのかもしれない。

(写真絵本作りについてはサブギャラリーにてさらなる説明を後述)

(絵画におけるスーパーレアリズムの話がでて) 一般的に写真は撮っているだけだろうと言われるが、スーパーレアリズムは自身の意思で描いている。私は写真を撮ってもスーパーレアリズムのように作り込んで写真で描きたい。

また、10年前に長年住んでいた東京から山形へ移り住んだ。東京に住んでいた時は東京に興味が無く撮らなかった。東京へ帰省する立場になると帰省の際に東京を外から見て優しいイメージを感じるようになった。外から東京を見る(撮る)ようになった。

(中北社長の補足: 山形の沼は里山のため池で実はこれも人造物である。)

 

その後、サブギャラリーへ移動すると写真絵本「空気売りの少女」のメイキングについての説明があった。

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

この写真絵本は(1)ストーリー、(2)人物[絵]、(3)背景[作品の写真]の順で決定された。先にも紹介したようにストーリーは絵かきの相棒と作り込んだ。絵は相棒が担当したが、そのイメージを伝えるため相棒にモデルとなってもらい伝えたいイメージの写真を撮った。その写真はNo.38〜45である。モデルとなってもらうことにより伝えたいことをうまく伝えることができた。ただし、絵かきにもこだわりがあるので、前へ出している足が逆になっていたり、写真とは異なる仕上がりとなっていたが表現したいことは十二分に表現されている。描きはじめの一本の線にとても思いを込める人だから・・・。

 

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

なお、写真絵本「空気売りの少女」のあとがきには、あるほなつき(前田有歩・さとうなつき)の思いが語られている。その内容はギャラリーにも次のパネルで紹介されていた。

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

空気を撮ろうとする試みは、見えない物を意識する取り組みとして始めた。人間の目とは異なり、カメラが空中でもピントを合わせたままでいられるという違いは、空気を撮れると確信した瞬間であった。

そこに、何かが在ると思えること。そして、在ると仮定して、そこから、学ぶことができること。このことが、今の時代に必要とする知恵だと思うのだ。

空気は・・・

 

と続く。今なら伊勢和紙ギャラリーで観ることがてきる。ぜひ手にとってご覧いただきたい。また、伊勢和紙館で買い求めることも可能だ。
前田有歩さんは稲刈りのために山形へ戻られたが、30日(火)および31日(水)には在廊されるそうだ。

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

なお、DM等のイメージでは風景写真家を想像できてしまいそうなので、単なる風景写真家ではなく「空気を撮る写真家」であることを明示するために、ギャラリーへのアプローチである階段には敢えて「さかさまなもの」作品が展示されている。これは風景写真家と勘違いして訪れた観覧者への心遣いだ。

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

最後に私のお気に入り作品は次の写真の真ん中の作品。これはシリーズのなかでも唯一ほかの写真とレンズの絞り設定が異なるものだった。

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

前田有歩 写真展「The Air」@伊勢和紙ギャラリー

 

 

なお、私が伊勢和紙ギャラリーにて体感した過去の記録はこちら。

【伊勢和紙ギャラリーにて以前に体感した企画展ほか】

など・・・

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