北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」と関連イベント1「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」@gallery0369(津市美里町三郷)

2019年06月09日(日) 北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」と関連イベント1「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」@gallery0369(津市美里町三郷) (車、徒歩)

私も参加している写真好学研究所の所長でもある 写真家の松原豊さんが運営する gallery0369 では次の写真展が開始された。

写真展タイトル 北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」
写真展開催期日 2019年6月9日(日)〜6月16日(日)
開催時間 13時〜19時
休廊日 開催期間中なし
作家在廊日 6月15日(土)
展示構成担当 石井 仁志(メディアプロデューサー、本展示キュレーター)
展示企画担当 松原 豊(三重展担当)、石井 仁志(大阪展[gallery176、大阪府豊中市]担当)

詳細は、 北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」  |  gallery0369

 

白黒写真作品で著名な写真家「北井一夫」さんによるカラー作品の展示であり、「三重県でしかも美里町のような田舎町(失礼!)で開催されるのは奇跡のようだ」とのこと。(実は私は何も知らなかったのだが・・・)

さらに本写真展では3種類の関連イベントが予定されており、本日は最初のイベントが開催された。

6月9日(日)「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」15時〜(約90分予定)参加費¥2,000
6月15日(土)北井一夫さんに写真を見てもらおう 13時〜15時、参加費 ¥2,000(お茶付き)
6月15日(土)北井一夫さんギャラリートーク 16時〜17時、参加費 ¥1,500(お茶付き)

詳細は、 北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」

 

私は「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」に参加するため、通い慣れた古民家Hibicoreの隣にあるgallery0369を目指した。

gallery0369への案内掲示(津市美里町三郷)

gallery0369への案内掲示(津市美里町三郷)

 

雨上がりの小道を進むと

gallery0369、古民家Hibicore付近(津市美里町三郷)

gallery0369、古民家Hibicore付近(津市美里町三郷)

 

アプローチの入口には工事用のパイロンが置かれ車輌の進入を防いでいた。私は別の場所に車を置いて歩いてきたのでパイロンを軽々とすり抜けると坂道を下った。(右手の門をくぐれは古民家Hibicoreだ。)

gallery0369、古民家Hibicore(津市美里町三郷)

gallery0369、古民家Hibicore(津市美里町三郷)

 

坂の下に建つ事務所の扉を開けると併設された gellery0369へ誘われる。

gallery0369への扉(津市美里町三郷)

gallery0369への扉(津市美里町三郷)

 

ホワイトキューブのギャラリーでは、3面に作品が並べられ、

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)

 

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)

 

残りの一面からはモリアオガエル(こちらも作品)が全体を見守っていた。これは本展示のキュレーターである石井仁志さんが一年間の時間を掛けて考え抜いた展示構成だった。

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)

 

石井仁志さんは北井一夫さんの写真展のプロデューサーでありマネージャーでもあるそうで、今回、北井さんから託された展示写真の中でこの一枚「モリアオガエル」だけが趣を異にしていた。そのため、石井さんは悩んだ末に「モリアオガエル」が写真展全体を見守る構成にたどり着いたとのこと。

 

ところで、キュレーター、キュレーションってなんだろう。キュレーションについてはこのサイトで紹介されているように

【参考】 

 

写真の世界でキュレーションを考えれば写真を収集・整理し、特定のテーマに沿って再構成することにより新たな意味や価値を作り出すことであり、その業務を遂行する役割(人)がキュレーターである。

北井一夫さんから作品を託された石井仁志さんは「モリアオガエル」の見守りに加え、地域、色の相違、時間の変化などにこだわってレイアウトを決定したそうで魅せるための工夫が随所に仕込まれている。また、右回りおよび左回りのいずれでも抵抗感なく観られる構成で水平方向が連続するように配置されている。しかし、芸者の写真をこれらの中に調和させるため、その部分だけは上下にも広げてボリューム感を持たせて配置された。また、フランスの写真は動画のように見えるように写真同士の間隔を無くした。

 

そろそろ定刻となると関連イベントの第一弾である「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」が松原豊さんの挨拶で開始された。

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」の案内はがき

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」の案内はがき

 

本イベントは石井仁志さんと松原豊さんの対談形式で、「北井一夫さんの写真の魅力を三重の田舎のギャラリーで感じる」ために進められた。(ここでは、各人の発言内容を特定せずに書きなぐっている。あしからず。)

 

【石井仁志さんの自己紹介、日本でのキュレーターの地位、写真の保存の問題点など】

まずは、本展示キュレーターである石井仁志さんの自己紹介に始まり、日本でのキュレーターの地位、写真の保存の問題点などについて語られた。

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」の関連イベント1「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」@gallery0369(津市美里町三郷)

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」の関連イベント1「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」@gallery0369(津市美里町三郷)

 

石井仁志さんはキュレーター・プレゼンター・ディレクター・プロデューサー・マネージャー・営業など多様な職種をこなしている。いくつかの大学ではメディアと組んで掘り起こしたものをメディアに紹介するとともにデジタル化してアーカイブする仕事など、20代後半から64歳になるまで裏方としてずっと写真に関わっている。「本展示で担当したようにキュレーションは作品の魅力を引き出し価値を高めるためにも重要な仕事である。しかし、日本にはキュレーションを評価する土壌がなく、金を出さない。そのため、写真の仕事だけでは食えずにメディア評論や音楽プログラムの制作など趣味の世界に関連した仕事もしている。キュレーションを評価してくれるのは北井一夫さんら一部の人たちだけである。今後もこのような機会が得られれば、裏方として日本の文化の幅広さや深さを伝えていきたい。」とのこと。

今回の展示構成については「モリアオガエル」に始まり様々な工夫(上述)が展開されている。写真の固定には鉄製の平釘と強力なネオジム磁石を使った。この方法では作品に穴を開けることがなく作品を傷めない。また、固定箇所は四隅で上部の2箇所には大きめの磁石、下部には小さいモノが重ねられている。なお、平釘の頭は下部の方が手前に出るようにし、写真には少しの傾斜を持たせて観やすくしている。このように、キュレーターとしてのこだわりと実践は半端ではない。

ご自身の活動内容と世間の学芸員や司書の活動を比較してしまうのだろう。「学芸員や司書には多様性がない。日本には教える機関が無いので海外へ行くべきだ。」とも。

 

【作品の保存】

20世紀のメディア(SDカード、DVD、HDDなど)は、劣化により保存されている写真や動画や音声が突然に消えてなくなる危険性を抱えている。それに対して紙に焼いた写真、たとえば銀塩写真であれば200年は持つ。そのため「新たな保存方法を開発しない限り、20世紀のメディアは消えてなくなる。」と言い続けている。

 

【北井一夫さんとの出会い】

続いてはお二人、それぞれの北井一夫さんとの出会いについて語られた。

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」の関連イベント1「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」@gallery0369(津市美里町三郷)

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」の関連イベント1「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」@gallery0369(津市美里町三郷)

 

石井仁志さんは、父親が医者で石井医院の待合室には多数の写真雑誌が置かれていた。中学生の頃はそれら写真雑誌で北井一夫さんの写真をリアルタイムにすべて観ていた。あまりにもファンであったため、その後何度か北井一夫さんと会う機会があったものの話もできずにいた。しかし、東京都〇〇美術館でお会いした時、勇気を振り絞って声をかけた。その後、北井一夫さんの写真を求める方を紹介する機会があり、地道に売上をあげた。するとその実績により北井さんからディレクターやプロデューサーを依頼されるようになり、今では写真を預かる関係にまでなった。

松原豊さんは、旧東京写真専門学校の学生だった頃、図書館に置かれていた北井一夫さんの写真集「村へ」を観て、「自分が育った村へ行こう」と思った。それが卒業制作につながり、さらには「村へ」とはタッチは異なるものの写真集「村の記憶」へとつながった。友人である亀山の酒屋の息子に誘われて、北井一夫さんの自然流日本酒読本(農山漁村文化協会)出版パーティーに参加したところ、酒の力も借りて北井さんとかなり話し込み、手紙のやり取りにいたり、写真も買った。その後、写真集「村の記憶」を出版した際、お手紙をいただいた。

 

【ここからは本番、序章

以上が前フリだったのでが、これでも十分な内容である。

ここからが本番だ。

今回のイベント参加者には、参加費に含まれていたエッセイ「写真家の 記憶の抽斗 北井一夫」が配られた。この本は北井一夫さんによる週刊読書人への連載記事をまとめたもので、石井仁志さん曰く「誇大ではなく真実が記されている。」

まずはこの本をめくりながら、

  • ねむい、薄いプリントだけどしゃっきりしている。
  • この娘は北井さんの娘さん。
  • モノクロとカラーは同時に持たないので、カラーからモノクロ化している?
  • 足の切り方が独特である。こんな写真が多い。

この本が北井ワールドへのアプローチとなった。

 

【視座】

続いて、石井仁志さんが視線でも目線でもない「視座」について言及した。

写真家や写真作家になるか、ならないかは視座を持てるか否かによる。

視座とは自分自身の座標軸であり、これを作り上げるには次の三点が重要である。

  1. 多くを観る
  2. SNSなども区別しないで観る
  3. 見えないものを撮る

ただし、写真家や写真作家でなくとも純粋な写真の価値としての記録を残すことはできる。

 

【北井一夫さんの写真について】

(石井さんからの「北井さんの写真を観てどう感じる」との質問に対して)松原豊さんは、「白黒に色のレイヤを重ねたようで、幼少期がフラッシュバックする。モノクロームよりも印象が強かったことに驚き。」

その後、石井さんと松原さんが北井さんについて

  • 車を運転しないのは写真家としては珍しい。カメラはライカが2台。
  • 写真集「村へ」で築いたステータスをどのように維持するのか試行錯誤してきた。
  • 北井さんはフランスの写真家アジェのコレクターでもある。アジェは大きなカメラで目立たずに日の出から3〜4時間をコツコツと撮っていた。北井さんは小型カメラではあるもののアジェに近い。
  • 日常を自分のスタンスで撮る。パリでも沖縄でも同じスタンスで撮る。これは日常の座標軸?
  • 写真は儀式化しなくても日常を撮ればいい。
  • 北井さんは「今の芸術、絵画はバカバカしいことに面白さがあるんだよ」と言い、「ユズが3個」や「日の丸が3個」などを撮っている。(「写真家の 記憶の抽斗 北井一夫」によると、この言葉は上海を旅行している時に実川さんが北井さんにポツリと言ったものだった。)
  • 写真集「道」は売れなかったが、石井的にはベストである。

 

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」の関連イベント1「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」@gallery0369(津市美里町三郷)

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」の関連イベント1「北井一夫写真の面白さを探ってみよう」@gallery0369(津市美里町三郷)

 

【プリントを買う意義】

ここで石井仁志さんが営業担当者でもある顔が出た。(展示されているプリントの営業がてら)

プリントを買うことの意義について・・・

  • プリントを売りたければ、プリントを買う。そうしないと買う人の気持ちがわからない。
  • 何もなければ何もない。
  • また、モノを観る姿勢を保つためには観るものを常に手許に置いておく。
  • 多くの数を観て、好きなものを見つける。そして飾る、観る頻度を高める。これはキュレーションである。

 

【北井一夫さんと写真の特徴】

  • 広角で撮っているのでいろんなものが映り込み、周辺の空気や時代背景を感じる。
  • 北井一夫さんは「人の良いアマノジャク」を70年間も貫き通した人である。
  • 電柱や道をよく撮っている。(「写真家の 記憶の抽斗 北井一夫」のP.88には「道には季節を問わず日射しが重要である。道端にある草木の存在をひきたて、老木や木製電信柱は歩く人の心の迷いを解きほぐして、日射しと一緒にやさしく語りかけてくれる」と記されている。)
  • 人を中心に据えて撮る。
  • 芸者写真は非日常をうまく捉えている。
  • 光に対する独特のセンス。

 

イベントは以上で終了となった。

イベント後に眺める作品はさらに見え方が変わったことだろう。

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)

 

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)

 

熱気に包まれgallery0369を後にすると私も昂ぶりながら帰途についた。

gallery0369への案内掲示(津市美里町三郷)

gallery0369への案内掲示(津市美里町三郷)

 

私は右肩上がりの写真たちに北井一夫さんの視座を感じた。

また、エッセイ「写真家の 記憶の抽斗 北井一夫」を読むと、北井さんの写真にはご自身の記憶が封じ込められていることがよくわかった。封じ込められた記憶がみるものの記憶を呼びさますのだろうか?

北井一夫さんの写真は身構えて観るものではなく当たり前のようにぼんやりと見るべきなのだろう。この記事を書いていてそんなことを思った。また、ここに並べられた写真が一枚だけ独立して路傍に置かれていたとしたら、私はそれを素晴らしいと感じただろうか?正直言って自信がない。しかし北井一夫さんはそのような当たり前さ、日常感を追い求めているのだと思う。
最後に、石井仁志さんが言われた視座、3つのことを実践すれば本当に自らの視座が身に付くのだろうか?大いに興味深かった。

 

北井一夫写真展「カラー いつか見た風景」@gallery0369(津市美里町三郷)は、6月16日(日)まで

ぜひとも、体感を!

 

【追伸】

会場では当然のことながら北井さんについて語るために「キタイさんが・・・」「キタイさんは・・・」が連呼された。実は、私はその言葉に反応してしまい、慣れるまでしばらくは落ち着かない状況が続いた。

なぜなら、私の当所のブログネームは【キタヰ】であり、本名を追記した今となっても町なかで「【キタヰ】さん」と呼んでいただくことがままある。そのため、「きたい さん」の音に反応してしまっていたのだった。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*