2019年02月09日(土) 高向御頭神事 祷屋宅・会所・打祭り・切り祓い(伊勢市御薗町高向) (車、徒歩)
河邊七種神社社務所での古文書の会を終えると、祷屋宅および会所での七起の舞を期待しつつ、再び伊勢市御薗町高向を訪れた。さらには一時帰宅した後、打祭り、切り祓いを拝観するために夜にも・・・。
まずはそれらの祭場の朝の様子を紹介しておこう。
【高向御頭神事-切祓祭場】
こちらは高向区の東の端に所在する切祓祭場で、打祭りの最後に切り祓いが執り行われる。
【ボンド】
続いては切祓祭場から会所方向へ西に向かい、札場を過ぎたあたり。
【参考】
- やっと紹介できた最後の札場(伊勢市御薗町高向) 2018年03月03日
名前の由来は知らないがここはボンド。砂を撒く場所、2箇所には
(砂)と記されていた。
さらにボンドの近くには多数の松明が準備されていた。(ほかの場所にも多数)
【追い込み小屋】
先日訪れた追い込み小屋には幕が張られ、その中ではすでに火が焚かれていた。
【参考】
- 高向御頭神事のための高向共盛団による「追い込み小屋」の準備(伊勢市御薗町高向) 2019年01月27日
【積木(ツムギ)祭場】
こちらは積木(ツムギ)祭場。祷屋宅で奉祭されていたオワケと追い込み小屋の入口に立てられた壁が焚き上げられ、打祭りの際に御頭がこの回りを3周する場所である。
以上が朝の様子で、ここからは午後4時前に訪れた時の様子。
【会所】
会所を訪れると御頭待ちの状態で、「七起の舞はかなり先になりそう。」とのこと。さらに大社の御頭はまだ祷屋宅にいるとの情報も得たので、
【大社の祷屋宅】
その場所を探していると散歩中の女性に出会った。たまたまその方向へ帰るということで案内していただけた。(感謝) 祷屋宅に到着すると座敷の窓側は黒山の人だかり状態だった。。その理由がわからないまま
御頭の舞を眺めていたが、
どうやら七起の舞は終わってしまったようだった。
座敷では楽が鳴らされると何かが・・・
余りにも人が多かったので祷屋宅を後にして会所まで戻った。 (後で、口取の舞が執り行われたことを知った。拝観したことがないので次回はぜひとも拝観したいものだ。)
【会所】
再び会所を訪れると
鏑社の御頭が姿を現していたが、どうやら七起の舞はまだまだ始まらないとのことだった。
一時帰宅すると、午後7時半過ぎにまたまたボンドを訪れた。
ボンドでは御頭神事が昼の部から夜の部へ移るための作業が進められていた。
またボンドから会所へと続く道路の壁面には多数の松明が立て掛けられ、この付近では打祭りの準備が終わっていた。
会所を訪れるとこの付近には次々と松明が運ばれ
積木祭場の近くには祷屋宅にあったオワケがすでに運ばれていた。
【参考】 オワケについてはこちら
- 高向大社 オワケ祭ほか(伊勢市御薗町高向) 2017年12月03日
しばらくすると、さらにオワケが運ばれてきた。
これで大社と鏑社のオワケが揃った。
オワケは積木祭場で焚き上げられるが、消防団の方に尋ねると「点火まで1時間半くらいはかかるだろう」とのこと、
私は積木祭場とボンドを往復していた。
すると、太鼓を打ち鳴らしながらボンドから会所へ向かう姿を見かけた。
これは何かの伝令? 神事の主催が会所から高向共盛団へと引き継がれたことを示すものだろうか?
再びボンドへ向かうと頭上で御頭を振る姿を見かけた。(次の写真は他のカメラマンのフラッシュに蹴られたモノ)
その後、御頭から紙垂が取り外されると
打祭りの準備が終わりを迎えるのだろう。
御頭が夜の部へと装いを変えた頃、高向共盛団の団員が御頭に向かって突進して飛びかかると御頭を奪おうとする。
それをしっかりと守るのが彼らだ。
これは「ダマシ」と呼ばれるそうだ。
高向共盛団の方からいただいたパンフレットによると「ダマシ」とは
打祭りの開始の際、ボンドでの一幕です。祷屋番宅や会所でも見ることができます。
本来、御頭を一番に挙げることができる年齢は23歳、26歳の者と定められていますが、共盛団員が年齢を偽って、我先にと安置されている御頭を奪い取ろうとします。
これを「ダマシ」と呼び、共盛団員達は「お方踊り」を唄い、「ソロタ、ソロタ」の掛け声と共に、御頭を目がけて一斉に飛びかかります。
御頭の守り手である御棚(ミタナ)が、ダマシの襲撃に備え、これを防ぎます。
である。
この「ダマシ」は何度も繰り返される。
ダマシが終わり、松明に点火されると打祭りが開始される。
会所前にある追い込み小屋へ移動すると、高向共盛団員は打祭りの開始を「今か、今か」と。
しばらくすると
提灯を手にした団員が追い込み小屋へ駆け込んできた。
これが合図なのだろう。団員たちは入口の壁を押し倒して駆け出した。打祭りの始まりだ!
ボンドへと走り去った高向共盛団員。その後に残されたこの壁は消防団員の手により
積木祭場へ運ばれる。
松明に火を着ける間に
オワケが積木祭場に移動された。
そして、ついに積木祭場への点火との時がやってきた。
点火されるやその火はまたたく間に燃え上がり
オワケにも及んだ。
ほどなくオワケは見る形もなく崩れ落ちてしまう。これで一区切りとなるのだろう。
勢いを増した炎は
さらに上へ上へと伸び、竹が弾ける音が「パン、パン」と響き渡る。
オワケの最後を見届けた私が積木祭場を後にしてボンドの方へ移動すると、燃え盛る松明に導かれた御頭が迫ってきた。
会所付近へ戻って待機していると
燃え盛る炎が近づいてきた。
いつも思うが、「こんなに民家に近接していて大丈夫なのか?」
そんな私の思いなど関係もなく、火勢とともに頭上で振られる御頭は勢いを増す。
ここから積木祭場へ入るとその場を三周する。
私の近くに小さな女の子がいたので、その子と同じ目線で眺めてみるとなんとも迫力が増した。
積木祭場での3周を終えた御頭はボンドへ戻り、切祓祭場へと向かう。
先行してボンドへ向かうと切り祓いのための松明に火が着けられていた。
太刀を肩に担いだ男性が切祓祭場へ向かう。
松明も祭場へ到着すると
注連縄の前の薪に火が着けられた。
切り祓いを前にカレエ(小さく刻まれた餅)がまかれる。カレエを食べると病気の予防になるとのこと。
続いて楽が奏されるなか、太刀舞の最後に
杉大夫(舞手)が鞘から太刀を抜くと注連縄を切り祓った。
その後、団員に抱えられ舞衣に包み隠された御頭が個々に切り祓った注連縄を通り抜けると
来た道とは別の経路にて会所まで駆け戻る。
両御頭が会所へ戻されると、積木祭場では高向共盛団と奉祭関係者により大かがり火を囲んでのおかた踊りとなる。その後は、会所前にて高向共盛団々長および区長による挨拶の後、万歳三唱にて高向御頭神事は終了となる。
【参考】
- 御頭神事(高向大社) – 切り祓い、おかた踊り、挨拶、万歳三唱 (2012) 2012年02月11日
今までの拝観でパワーを使い果たした私は切祓祭場の鎮火を見届けると帰途に着いた。
その途上で見かけた、松明から焼け落ちた炭の小片が風に吹かれた路上を彷徨う姿が印象的だった。
堅実に守り伝えられている印象のある高向御頭神事であるが、高向共盛団でも今後の若者の参加に懸念があるそうだ。今の時代、どこの地域もが抱える問題であるが、こんな素晴らしい高向御頭神事を今後も続けられるよう若者の参加に期待したい。