2018年07月07日(土) 左官職人 杉本幸樹氏による「においとりだんご作り」体験と南部美智代作品展(賓日館) (車、徒歩)
本日は賓日館(伊勢市二見町茶屋)にて、左官職人 杉本幸樹さんによる「においとりだんご作り」体験が10時と13時に実施された。私は丸い石への憧れと臭いを取るという実用性の二面から「においとりだんご作り」に魅力を感じる。実施日を間違えて先週にも訪れてしまったくらいの私なのでなるべく早く参加しようと10時の部に参加することにした。
【参考】
- 「においとりだんご作り」の日と間違えて訪れた賓日館(失敗談) 2018年06月30日
早めに賓日館に到着するとまずは催事看板を確認した。「本日で間違い無し!」
また、明日(7月8日)までは「夏のよそおいをミニ着物にたくして 伝統の左官を現代に受けついで」と題し、杉本幸樹さん達が制作した土壁と南部美智代の手によるミニきものがコラボした夏の企画展が展開されている。
その企画展が開催されている1階の旧客間へ向かうとその入口にてこちらの作品が迎えてくれた。
こちらが企画展の看板。
廊下を奥へ進むと突き当り、左側の部屋に
ピカピカ光る「どろだんご」が置かれていた。丸い石を探すのがライフワークにもなっている私は思わず「丸い石見っけ!」と言ってしまった。
【参考】
- 永遠の忘れ物(?)、丸い石を求めて熊野 七里御浜へ 2016年12月17日
「においとりだんご作り」は縁側付近で実施され、最初は今回の講師である左官職人 杉本幸樹さんの知人ご夫婦と私の3人だったが、途中で茨城県から旅行で来勢していたご夫婦が参加し総勢5名での体験となった。
まずは、テーブルに並べられたのカラフルな土から始まった。これは顔料などは使わずに固有の色を有する土だった。日本には100はゆうに超える種類の土があるそうだ。
そして、こちらが今回の体験で作成する「においとりだんご」だった。
杉本さんは持参した材料や道具を広げながら
テーブルを養生しつつ
ブルーシートを敷いた体験スペースを作りだしていった。
こちらでは「においとりだんご」のにおいとり効果の検証実験で、アンモニアを内部に吹きつけた瓶に
「においとりだんご」を入れて10分ほど放置した。蓋をする前の臭いはむせるほどだったが、10分経過後には無臭に近くなっていた。かなりの効果である。
実験の準備を終えると体験が開始された。と言っても砂と珪藻岩と土の調合は杉本さん任せ。
さらに、水の分量と撹拌もすべて杉本さん任せ。
参加者がただただ土を取って丸めるだけだった。しかし、土いじりは楽しい。癖になりそう。
だんご作りの最中は手が泥だらけだったため写真は撮れなかった。完成してからお持ち帰りのためにパチリ。
以上で「においとりだんご作り」体験は終了となった。またこの体験の前後では旧客間にて開催されている夏の企画展「夏のよそおいをミニ着物にたくして 伝統の左官を現代に受けついで」を観覧した。
南部美智子さんが生み出したミニ着物の展示とそれを引き立てるかのようにミニ着物の背後にそそり立つ土壁が印象的だった。
こちらの土壁はそれに含まれる麦が印象的な表情を示している。。
旧客間での観覧を終えると入口付近に展示されているショーケースに置かれていた左官職人の商売道具であるコテを眺めていた。すると杉本さんが声を掛けてくださり、お話するなかで杉本さんが2011年頃から土壁とアートとの協働による制作を開始した理由の一端を知ることができた。
さらには地金を叩いて作られた高級なコテやコテの微妙な形状と左官の腕、さらにはショーケースの上段中央部に置かれたコテの柄にある「榎本」の文字の意味、平面を出すためには中央を微妙に凹にする技、AIと人間と技術と技能の関係、ストーリーの重要さなどなど・・・・
なお、今回の体験でも配付された左官フォーラム2017特別展左官×実験の図録によるとコテの柄に彫られた「榎本」さんとは杉本さんが師事した師匠だった。そのことがこの言葉で表現されていたのだろう。「おやじの左官の技術をひきついで」
道具も技の一部なのだろう。
土壁の効果を説明するために実際に壁に水を飛ばしてみるなど杉本さんの言葉と行動に魅せられた。
今回の展示が終了するとこれらの土壁は倉庫入りとなるそうだ。損得抜きでのアピールには杉本幸樹の熱い思いを感じる。
多くの方に左官職人の技に目を向けていただきたい。
有効活用できる場所は無いものだろうか?