2019年09月16日(祝・月) イデアの捉え方 齊藤正美/星柿「左」@VOLVOX(津市栄町) (車、近鉄、徒歩)
写真好学研究所の仲間である星柿「左」さんが、VOLVOXにおいて「イデアの捉え方」なる二人展を開催していた。ここで展示されていたのは写真ではなく絵画だ。星柿「左」さんがどのような作品を作られるのだろう? 興味津々で会場へ向かった。
VOLVOXの入口から
会場へ進む。
会場には齊藤正美さん、星柿「左」さんが在廊中だった。
お二人にはそれぞれに詳細に説明をいただいた。(しかし、個々の話に集中するあまり、お二人の関係性、なぜにこの二人展が実現されたのかについては聞きそびれてしまった。)
【星柿「左」】
まずは星柿「左」さんよりの説明・・・、
彼の作品としては、コンピュータを利用した幾何学パターンの組み合わせ表現と完全に手書きによるものの二系統が展示されていた。
こちらは基本図形(○△□)を周期構造として表現したもので、基本図形のずらし、回転、反転などとさまざまに展開して作られている。
「周期Ⅰ」「周期Ⅱ」「周期Ⅰ(白黒)」「回転対称性」「転移」と名付けられた作品たち。それぞれの周期構造表現のなかには、多くのエネルギーを有するプリミティブである○、△、□を組み合わせた基本形がネコやトリなど馴染みがある形として現れる。想像力を働かせば他にも見えるものが・・・
たとえコンピュータを利用したとしてもかなり根気のいる作業だ。
さらに、隣の作品たちは光子のエネルギーが中心から発して宇宙の果てへと放たれていた。
じっと見つめていると星柿「左」さんがイメージした光子の文字が揺らぎ始め、静から動が生み出されていく。それは私が自身のエネルギーで動かしているように錯覚させるものだった。
その他ハッシュを使用した表現もあったが、
このような作品群のなかでも、私はこちらの手書きの作品に惹かれた。油性のペンで手書きした素描に色鉛筆で表情が染められていた。こんな豊かな創造性で素晴らしい作品が制作できるのに、さらに写真にまで手を出しているとは・・・。さまざまな体験がリンクしてさらに深みと広がりのある作品が作り出されるのだろう。
星柿「左」さんの新たな一面を発見したようでとても刺激的は時間だった。豊かな創造性が羨ましい。
【齊藤正美】
続いては、齊藤正美さんより作品について説明していただいた。
齊藤さんはリタイアしてからボタニカルアートの世界に魅了されて、自らで作品を作るようになった。
2012年に鳥取県在住の岩田宰子さんに師事してボタニカルアートを学ぶと、2017年に鳥取県米子市で「身近な植物画」展を開催したそうだ。ここに展示されている作品も植物図鑑に掲載されているような植物の絵が・・・
制作方法を尋ねると「一枚を仕上げるのに一ヶ月ほどかかるため、自らで撮った写真を見ながら描いている。時には複数の写真を合成した写真をもとに描くこともある。」とのこと。
その話を聞き、スーパーリアリズム作家の作画手法を思い出した。過去を振り返るかのようにこちらの図録を引っ張り出してきた。1985年および1990年に新宿の伊勢丹美術館で開催された展覧会のものだから、もう30年以上前だ。久しぶりに図録を開くと、齊藤さんからプレゼントをいただいた気分になった。
絵画は写真とは異なり一瞬では作り出せない。「イデアの捉え方」を鑑賞し、絵画とは時を封じ込めた芸術であることをあらためて実感した。
【追記 2019-09-22】
写真は一瞬のレリーズで作り出されるが、その一瞬に至るまでの撮影者の経験や準備が作品に反映されるので、写真は写真なりに時を封じ込めているはずだ。昨日に写真展を鑑賞して特に感じたので、ここに追記。
絵画を意識し過ぎたあまりに・・・
表現手法に加え、それぞれの作家が封じ込めた時およびその質によってもイデアは変化するのだろう。
作品展のテーマのせいで、なんか哲学的になってしまった。
と言ってもプラトンのイデアを正確に理解していない私がイデアを語っても説得力はないのだが・・・
今回は理屈ぬきに楽しませていただいた。感謝。